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親父と富士登山

方言小話:現代物

親父と富士登山

【前篇】

昭和60年の夏の事でやんした。
親父から電話が来た。
親父の電話
当時オラは、静岡に住んでいた。

「富士山さ登るてじゃ、オメよ連れてってくれな」

「何すてよ、結構大変だよ・・」

「いや~、ほれ!・・・オレもよ、60歳になったべ、
だから記念によ、富士山は日本で一番高い山だべさ」

盆の休みに一緒に登る事にしたのだった。
親父はやってきた。
何かしら気合いが入っていた。


【後編】へ続く



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親父と富士登山 その2

親父と富士登山 その2

【後編】

御殿場口から、夜に登り始めた。
ゆっくりゆっくりと、歩く。
頂上でご来光を拝む予定だ。

親父の足取りも、年の割には達者である。
この調子だと、大丈夫だろう。
7合目で、大休止をする。

富士の山裾で親子の会話だ。

「オラはよ、若い時に岩手山に登った事がある、それ以来だな」

「親父よ、これからが大変なんだからな」

「な~に大丈夫だ、オラァよ・・山仕事で鍛えた体じゃ」

八合目付近になったら、途端に足の動きが鈍くなった。
息も荒くなってきた。少し歩いては、止まるようになった。

「こりゃ、もしかして高山病かな・・・まずいな」
オラは不安になってきた。
富士登山
歩くよりも休んで座ってる方が多くなった。
空が白んでくる。

九号目だ。
頂上の岩が目の前に見える。

しかし、もう動けそうもない。
無理をすると危険だ。

じーっと座って目をつむっている。

「親父さあ、御来光は此処で拝むべな」

「・・・う・・ん・・だな」

頂上を急ぐ登山者の足音を聞きながら、
目をうっすら開けて、景色を眺める。

四方の連山、雲海。
東の空が一層明るくなり、光線が走る。

日の光だ、御来光だ。

横たわる親父の顔に光が当りほんのりと赤くなった。

頂上から、万歳の叫び声が響いてくる。

だいぶ経った。
親父が立ちあがった。

「大丈夫か・・無理せんでいいぞ」

「うん・・だいぶ楽になった」

再びゆっくりと歩き出した。
頂上に着いた。

「着いたぞ、頂上だ。富士山の頂上だ」

頂上だ
親父は、頂上で撮った写真を大きく伸ばして
部屋に飾り眺めていた。

疲れた顔だが、

「どうだ、登ったろう」
と、言うような表情をしている。


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プロフィール

大坊峠のツッチー

Author:大坊峠のツッチー
岩手県は北緯40°に位置する岩手町から地域の情報を発信します。山里で農業を営み、昭和26年生まれの人生と、方言による創作小話・童話を綴ります。尚、作品は著作権とし、無断使用はお断りします。

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