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泣きながら歌う「ああ上野駅」

方言小話:泣きながら歌う「ああ上野駅」

泣いて歌う上野駅

今年の正月には、
八郎さんは、帰ってこねかったなや。
盆には帰って来るべか。

八郎さんは、集団就職で出て行ったんだ。
一生懸命働いてな。
東京さ家っこ建ててるんだ。

帰ってくると、オラの所さ顔を出すんだ。
「おーい、いるか」
てな。一緒に飲むんだ。

「オメぇはいいな、故郷に帰れてよ」
「うんだ、帰ってもう、6年になるじゃ」
「オレはよ、オンズだからなー・・・」

オラは、話を聞いてやるんだ。
真っ黒になって、遊んでけだこと。
いつまでもいつまでも語るんだ。

八郎さんは、音痴でな。
でも、でもな。
必ず歌う歌があるんだ。
「ああ、上野駅」だ。

でもな・・・、この歌を歌うと途中から涙っこ出てよ、
泣いてすまってな。
声が震えて出ねえのさ。

八郎さんの頭の中は、あん時の事が蘇ってくるんだ。
就職列車に乗って離れて行った時の寂しさ、
町工場での厳しさ。

何度、何度、家に帰ろうかと上野駅に行ったことか。

「この線路は、古里に続いているんだ」

休みの日には一日中、駅をうろうろしていた事もあったてな。
オラは、何度も何度も聞いてやってるんだ。

八郎さんの歌は、もう、声にならねぇ。
涙と鼻水で、顔もくしゃくしゃになってなや。
そいで、オラも一緒に涙を流すんだ。

「よう、辛抱したなや・・・、よう頑張ったなや」

盆には来るべか。
元気な顔を見せて欲しいなや。
オラ、話っこを聞いてやるじゃ。


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プロフィール

大坊峠のツッチー

Author:大坊峠のツッチー
岩手県は北緯40°に位置する岩手町から地域の情報を発信します。山里で農業を営み、昭和26年生まれの人生と、方言による創作小話・童話を綴ります。尚、作品は著作権とし、無断使用はお断りします。

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