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童話:欠食児童の鼓笛隊

欠食児童の鼓笛隊
欠食児童の鼓笛隊

山の中に小さな広場が残ってる。
ここに、かつて生徒数40人余りの小中学校があったんだ。
街から遠く離れたこの地域では、炭焼きをする人たちが沢山いたんだ。

あっちの山、こっちの山からも炭を焼く煙が上がるんだ。
ワラス達が山道を登ったり下ったりして学校さ来るのさ。
だけども、何処の家も暮らしは楽じゃなかったのさ。

弁当持ってこない子もいたものさ。
昼時になると、沢水を飲んだり、木の実があれば
そこまで、走って行って登って食ったものさ。

ある日、国の機関の人達が僻地の視察に来た。
東京でオリンピックが開かれるって時にまだ電気も何もないのさ。

役人のある人が、貧しい地域への予算の配当とかを訴えたけども、
「そんな所に回す金などない」
と、耳を貸さなかったとさ。

それで、職場の人とかに寄付を募り、集まったお金で楽器を買って送ってくれたのさ。
学校に楽器が届いた時は、びっくりしてな。
初めて見る楽器だもの。ワラス達生徒は大喜びしたのさ。

困ったのは、先生よ。校長先生以下5人の先生達がいたけども、
音楽を教えれる人がいなかったのさ。

「先生、これ笛吹いていい」
「これ、叩いていいか」
と、言われても分からなかったのさ。

先生たちは、子供等の喜ぶ姿を見て音楽を覚えよう、一緒に楽器を吹こうと、
ピアノを買ってきたとさ。
お互いが弾きあい、そして休みには街へ出かけ他の学校の先生から教えて貰ったのさ。

課業後、誰かがピアノを弾くと側に寄って、笛を吹き、太鼓を叩いた。
そして、生徒を交えて練習を始めたのさ。

間違えたけども。皆喜んでな。遅くなっても、休みでも来たんだとよ。
だってな、この山には遊び道具はないんだもの。
腹減っても、いい音が出たり、間違わずに吹けたら面白いんだもの。

1年生の小っちゃな子もな、上手になったのさ。
吹ける曲の数も増えて、山の中に曲が響くようになった。
炭焼きをやってる親たちも、手を休めて聞いたんだってさ。

学校の鼓笛隊の演奏は、町にも伝わり、東京オリンピックの時は
聖火リレーーの前に高校生、中学生のブラスバンドに交じって立派に行進して演奏した。

山奥の学校の子等が、笛や太鼓を持って街中を立派に行進をする姿に沿道の人達は驚いたそうだ。
そして、昭和40年になって、ようやく電気が通った。

この頃にはもう、中学生になると、作曲もできるようになっていたそうだ。
学校の行進曲ができた。

「炭焼き、父ちゃん」
父ちゃん炭焼き、まっ黒け
そのうえ無精で、ひげもじゃら
だけど、お目ん目は笑っている
オイラは山の子、穀蔵の子

「電気がついた」
電気がついた
パットついた
やっぱり電気は明るいな
ワッハハハ ワッハ ワーイワイ

小さな学校の小さな校庭に、生徒が並ぶ。
腹を減らし、ツギハギの服から伸びる手を動かし演奏する。

レパートリーも随分と増えた。
「太平洋行進曲」「こんにちは赤ちゃん」「トルコ行進曲」
「エリーゼのために」
そして、穀蔵子供行進曲である。

廃校になり、消えた学校。
炭焼きの煙もない。人もいなくなった。

空を見上げれば、当時と変わらぬ浮かぶ雲。
耳を澄ませばきっと聞こえてくるだろう、子供らの演奏が。







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大坊峠のツッチー

Author:大坊峠のツッチー
岩手県は北緯40°に位置する岩手町から地域の情報を発信します。山里で農業を営み、昭和26年生まれの人生と、方言による創作小話・童話を綴ります。尚、作品は著作権とし、無断使用はお断りします。

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