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童話:手あます小僧(ワラス)

手あます小僧(ワラス)
オラの息子のタケは、シワスねワラスでな。
さっぱり言う事は聞かね、
いっつも、お父さんに怒られていたな。
「こりゃ、タケ。ツラ洗え、目腐れつけてコノ」
「タケ、汚え足すて、こっちさくるなってば」
タケは、遊び歩いて真っ黒になって帰ってくる。
頭の髪はボサボサで硬くて尖ってたな。
たまに風呂沸かしても、
「オラ、入らね」
って、コブたけてな。
タケが小学校に入るときだったよ。
「その頭なんじょにかすねば、わかんねな」
って、床屋さ連れて行ったのさ。
床屋の小父さんが、
「さあ、ここの椅子さ、ねまれ」
て、言っても座るの嫌がってな。
「やんた、いい。オラ、髪切らなくても、いい」
って、こんつけてな。
「男ぶり良くすてけるから、ほれ」
と、小父さんが言うと
「ベロベロバー・・」
と、舌だして、やっ叫ぶのさ。
「このワラスは、手に負えね・・」
床屋の小父さんに追い出されてしまってな。
オラは困ったよ。
「鉛筆と帳面買ってやるから、床屋すて行くべ」
って、
なだめてな、小母さんがやってる別な床屋に行ったのよ。
嫌がるタケをようやく座らしたけども、
ジッとしてなくて、終わった時は、小母さん達も
ぐったりしてたよ。
入学式には、さっぱりした頭のタケを連れていったさ。
先生が名前を呼んでも返事しねのさ。
なんぼ呼んでも返事しね。
オラ、後ろにいて、ヤセなかった。
帰りに、
「何して、返事しね、皆して大きな声で返事してたべ」
って、聞いたのさ。
「だってさ、タケ造君で云うんだもの、オラ、君て言われことねえべ、だからさ・・」
それから、タケは、元気に学校さ行った。
帰りは何時も汚れてきてな。
川さ行ったり山さ行ったりで忙すもんだった。
タケは、中学校を卒業すると、就職列車に乗って行った。
「母ちゃん、ありがとう」
って、手を握ってな。
手あますのベロベロバーのタケがよ、
涙を流してな。
オラは、畑で思い出しては泣いてたよ。
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